使えそうで使えない、でもちょっと使える「建設住宅性能評価書」

設計住宅性能評価書を取得済みで、建設住宅性能評価書をこれから取得予定。国指定の第三者機関による住宅性能評価に対応し、品質面でも安心です。
目次

はじめに

中古マンションを購入する際、多くの人が意識しつつ、確認を後回しにしてしまいがちなのが、「住宅ローン控除」の条件です。
住宅の省エネルギー性能などにより住宅ローン控除額は異なります。省エネ基準適合住宅などの「認定住宅等」なら、住宅ローン控除額を最大140万円増やすことができます。
しかし、省エネ基準適合住宅の認定に必要な書類として指定されている「建設住宅性能評価書」は、そのまま確定申告で提出してもほぼ間違いなく利用できません。

シリーズ落とし穴、第1回は「使えそうで使えない、でもちょっと使える『建設住宅性能評価書』」
この記事では、制度の分かりづらい点を丁寧に説明するとともに、確実に住宅ローン控除の拡大に認定されるための方法と住まいコンパスが提供するサービスについて、わかりやすく解説します。

住宅ローン控除が拡大される「認定住宅」とは?

2022年以降、住宅ローン控除の制度は大きく変わりました。
中古マンションにおいては、次のいずれかの「認定住宅等」に該当することで、控除の上限額が優遇されます。

  • 長期優良住宅
  • 低炭素住宅
  • ZEH水準省エネ住宅
  • 省エネ基準適合住宅

対象となる住宅や基準の詳細については、国交省のWebサイトに詳しく記載されています。

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国交省Webサイトより


中古マンションの場合、この「省エネ基準適合住宅」に該当するかどうかが、控除拡大のカギになります。
そして省エネ基準適合住宅の認定に使える書類として、国交省のウェブサイトでは「建設住宅性能評価書」または「住宅省エネルギー性能証明書」の2種類が記載されています。

「建設住宅性能評価書」が利用できない理由

【落とし穴1】建設住宅性能評価書の交付日ルール

国税庁の公式ページには、建設住宅性能評価書の取得時期について、「家屋の取得の日前2年以内(中略)に評価されたもの」と明記しています。すなわち、築2年を超えた中古マンションの場合、建設住宅性能評価書を提出しても有効な書類とは認められません。

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国交省Webサイトより

ちなみに国交省の説明ページには、住宅ローン控除の証明書類として利用する場合の書類の有効期限について、明確な記載がありません。
住まいコンパスでは、国交省(住宅局住宅生産課)・国税庁に問い合わせを行いましたが、どちらからも”交付後2年を過ぎた書類では省エネ基準適合住宅と認定できない”旨の回答をいただいています。

【落とし穴2】再発行や再認定では救われない理由

「再発行」しても交付日は変わらない!
「2年以内なら有効なんだから、建設住宅性能評価書を再発行したらいいのでは?」…残念ながら、これは意味がありません。再発行はあくまで“写し”の発行であり、交付日は変わりません。新築当時の最初の交付日がすべてです。

「再認定」は事実上“夢物語”
「じゃあ再認定を取ればよいのでは?」…これは確かにそのとおりです。ですが、建設住宅性能評価書の再認定というのは実務上ほとんど存在しません。
建設住宅性能評価では、建物の構造や駆体の強度などを確認する必要があるため、通常4回またはそれ以上の現地確認が必須です。こちらはUHICという住宅確認検査機関の業務フローですが、一見して非常に複雑な手続きが必要なことがわかるかと思います。

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UHEC(都市居住評価センター)の既存住宅性能評価の業務フロー

さらにマンションでは専有部のみを評価することはできず、共用部も含めた建物全体の評価が必要となるため、管理組合との合意も必要になります。費用も、住宅ローン控除拡大により見込まれるメリットを確実に上回るほか、そもそも申請を受け付けている検査機関が限られているのが実情です。

【落とし穴3】住宅性能評価書では必要な検査項目の一部しか確認していない

国交省のWebサイトには「断熱等性能等級・一次エネルギー消費量等級双方の評価を行い、双方の評価がそれぞれの住宅の基準を満たすこと」と記載されていますが、2020年頃以前の多くの建設住宅性能評価書では、一次エネルギー消費量等級の認定を行っていません。また断熱等性能等級についても、2022年以前の評価書では「省エネルギー対策等級」という名称の認定項目になっており、追加確認と読み替えを行わないとそのままでは利用できません。

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国交省 住宅ローン減税のWebサイトより

つまり、築2年以上の中古住宅に必要なのは「住宅省エネルギー性能証明書」

これまでの話をまとめると、こうなります:

  • 築2年以上のマンションの場合、建設住宅性能評価書をそのまま住宅ローン控除の必要書類として提出することはできない
  • 再発行は意味がない。再認定は非現実的。

つまり、築2年以上の中古住宅で住宅ローン控除の拡大を受けたい場合、「住宅省エネルギー性能証明書」の新規発行が必須になるということです。


評価書は「省エネ証明書を発行するために」使う

「住宅省エネルギー性能証明書」は、建設住宅性能評価書と比べると発行が容易です。これは認定基準が緩やかというわけではなく、単に省エネ性能に関する認定のみに特化した書類となっていおり、認定対象の項目が少ないためです。

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住宅性能評価書と省エネ証明書の違い

2つの書類の比較についてはこちらに詳細をまとめています。

住まいコンパスでは、新築時の「建設住宅性能評価書」を入手できる場合に限り、評価書を使うことで発行プロセスの一部を簡略化しての住宅省エネルギー性能証明書の発行を行っています。
具体的には、建物の熱損失や外皮性能に関する計算の一部に新築時の評価書の結果を援用することで、現地確認を省略し“オンライン完結”でスピーディに証明書を取得できる仕組みです。
この場合、住宅省エネルギー性能証明書の発行日は、当社で書類を受け付け不備のないことを確認した日付となるため、中古マンションにおいても住宅ローン控除の有効な書類として利用可能です。

つまり、「建設住宅性能評価書」は、そのまま国税庁に提出しても有効な書類としては認められないが、「住宅省エネルギー性能証明書」を発行するための、いわば”材料”として必須である、ということになります。

まとめ

中古マンションを購入し、住宅ローン控除の拡大を受けたい場合、多くの方が見落としがちなのが「建設住宅性能評価書」の扱いです。この書類は、殆どの場合、そのままでは確定申告で使えず、控除拡大の対象になりません

  • 築2年以上のマンションの場合、「建設住宅性能評価書」をそのまま住宅ローン控除の必要書類として提出することはできない
  • 「建設住宅性能評価書」の再発行は、交付の日付が変わらないので意味がない。再認定は費用・時間の面から非現実的
  • 従って、住宅ローン控除の拡大には必ず「住宅省エネルギー性能証明書」が必要
  • 「建設住宅性能評価書」を”材料”として活用することで、現地確認を省略し、オンライン完結でスムーズに「住宅省エネルギー性能証明書」を発行できる

なお、「住宅省エネルギー性能証明書」を発行できるのは、住宅の決済(引き渡し)から6か月以内です。6ヶ月をすぎると証明書の発行はできますが、住宅ローン控除拡大の必要書類としての要件を満たしていないため、受理されません。

住まいコンパスでは、新築時の評価書をもとに現地調査なし・オンライン完結で「住宅省エネルギー性能証明書」を発行できるため、中古マンションでも住宅ローン控除の拡大が可能になります。

住まいコンパスでは、マンション名のみから「建設住宅性能評価書」が新築時に発行されているか、また「住宅省エネルギー性能証明書」を発行できる可能性が高いかを、無料で確認しています。画面右上またはメニュー内の「マンション名で無料診断」からお問い合わせ下さい。

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